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Cubase 6の話

 ものすごく今さらな話ですが、今年のはじめくらいにCubase Studio 5からCubase 6にバージョンアップしました。“Studio”と付くと高級そうに見えますが、実際は無印Cubaseのひとつ下のバージョンです(現在“Studio”にあたるポジションは“Artist”という名称になっています)。フラッグシップバージョンを手にするのはCubase VST 4.0以来……何年ぶりだろう。いや、あれの上にScoreとか32とかついていたやつがあった気がする。あっちがフラッグシップだったのか。まあそれは置いておいて、Studio版と無印版の違いはVSTプラグインの種類やサラウンド関係のところなどで、曲作りにおいて特別なことをするのでなければ大きな差はありません……が、フラッグシップバージョンにのみ搭載されているプラグインやソフトを見ると、完成した曲をもうひとつ上の段階に持って行ける、痒いところに手が届くものがそろっています。個人的にこれらのプラグインやソフトは、Studio(Artist)と無印の価格差を埋めるだけの価値があると思います。

 Cubase 6でのみ使えるもののうち、使用頻度が高いのはREVerence、VariAudio、MultibandCompressorです。
 REVerenceは、実際のスタジオやホールの残響音をシミュレートしたリバーブです。プリセットのLA.Studioをよく使っていて、ボーカルにかけるとすごくふくよかで自然な響きが加えられます。いわゆる高品位なリバーブというやつです。AV機器の品質を表すときによく出てくる言葉ですが、ものの品位が高いってどういうことだろうと考えてしまいます。なんとなくニュアンスはわかるのですが、深く考えるのはやめておくことにします。

REVerence
REVerenceの編集画面。デザインからして高品位感があふれています。

 VariAudioはオーディオ編集ソフトで、オーディオ素材を読み込むと音程を解析して線状に表示し、それを直接編集してピッチをコントロールすることができます。ボーカル録音をする人にとってはかなり有用なソフトといえます。VariAudioの優れているところは、それをMIDIトラックにMIDIデータとして書き出すことも可能な点です。いやはやすごい時代になりました。

VariAudio
VariAudioの編集画面。読み込んだオーディオデータをダブルクリックするとこの画面になります。左にあるピッチ&ワープをオンにするとピッチの解析が行われます。

 MultibandCompressorは、コンプを帯域別にかけることができるエフェクトです。他のメーカーのマルチバンドコンプも持っているのですが、Cubase標準搭載のものの方が自分の狙い通りの音質に近づくので、最近ではこちらをメインに使っています。

MultibandCompressor
MultibandCompressorの編集画面。プリセットも豊富なので簡単に使えます。

 あとCubase 6よりすべてのバージョンに搭載されている総合音源のHALion Sonic SEですが、これが思った以上に使えます。これはHALion Sonicの機能限定版で、音質もいいしポップスなどのオケと馴染みがいい音色が多く、即戦力になる音源です。今まで総合音源にはKontakt 4を使っていたのですが、HALion Sonic SEを使うようになって以来立ち上げることも少なくなりました。まあそもそもKontaktを総合音源として使うのがまちがっていると言われるかもしれませんが(笑 ひとつ難点としては、結構重いので音色チェンジに若干ストレスがあるところです。

 唯一使いどころがわからないのはLoopMashです。異なるループ素材を組み合わせて新たなループを作るというもので、ちょっと使ってはみたのですが、曲作りの中でどう活かせばいいのか思いつかず、DJプレイ的な遊びで終わってしまいました。
 しかしときとして新しいサウンドは、こういったソフトを普通じゃない使い方をしたときに生まれたりするもの。機会があったらまたいじってみたいと思います(というときはたいていしばらく放置するパターン)。

 ところでこれを書くのにSTEINBERGのサイトを見ていたら、Cubase 6.5が出ていたことに気づき、早速アップデートしました。
 プラグインがさらに充実していて、エフェクト系ではMorphFilterがかなりいい感じです。すごく効きのいいフィルターで、ポイントを左下から右上にスライドするだけで、クラブトラックでよく使われるドゥンドゥンドンドンシャカシャカと、高域カットから徐々に戻してその後低域を抜いていくようなサウンドを簡単に作ることができます。似たようなプラグインとしてDJ-Eqというものも新しく搭載され、こちらはもろに前述のサウンド制作を念頭に置いたもののように思えますが、ちょっと使ってみた限りではMorphFilterの方が簡単に再現できそうです。

MorphFilter
MorphFilterの編集画面。真ん中にある点を動かすだけの簡単操作です。

 インストゥルメント系ではPadshop、Retrologueというシンセが加わっています。Padshopはプリセットしかチェックしていませんが、かなり音質がよく、これがあればパッドサウンドに困ることはなさそうです。ただ音色を一から作っていくのは面倒くさそうな感じがします。

Padshop
Padshopを使ったサンプルです。
1~8小節:プリセットのStoned Photographを使用しています。存在感のある厚めのパッドです。カットオフを若干下げて、リリースを短めにしています。
9~16小節:Battery 3で作ったローファイなドラムを加えることによって、Burialが寝ぼけまなこで作ったかのようなすてきなサウンドに。
17~24小節:前述のMorphFilterを使って音色変化を加えています。

 Retrologueも同様にいい音がそろってはいるんですが、Embracer、Monologue、Mystic、Prologue、Spectorとシンセが大量にあって適切な使い方に非常に悩みます。そして結局MassiveとFM8を立ち上げるというパターンに陥っています(笑 MassiveとFM8のサウンドにマンネリを感じたらこれらのシンセを研究しようと思います。

 現在のように多くのシンセを同時に扱え、またそれぞれの音色数が膨大になると、音楽制作の可能性は広がるのですが、自分の求める音色にたどり着くのに時間がかかり過ぎてしまうという現象も発生します。たくさんのシンセに手を出すのではなく、自分の気に入ったものを選んでそれを自在に操れるようにするというのがひとつの解決法かなと思っています。

2012.8.29